文とか詩とかー
頑張って更新頑張るお!
「教えてあげる。あなたは今より前にここに訪れた。自分自身の罪を他人になすりつける為に」
―――俺は罪なんて起こしていない。
この女、長い間監禁されて頭が狂ったんだな・・・・可哀想な女だ。
「私は見たもの。あなたがここの兵士を虐殺するのを、この目で」
嘘言え!!
「私は嘘をついていないわ。あなたはこの城の兵士を殺し、王の所為にしたのよ!
あなたは『家族を王に殺された』と言っていたわね?そもそもそれが間違っている」
―――あぁ。この少女は、ここまで王の被害を受けていたのか・・・。
俺は可哀想な姫の話に付き合ってやることにした。
ずっと話し相手がいなかったのだ、自分の作った世界を話しているのかもしれない。話すことが出来ない人形のように――。
へぇ・・・どこが間違っているんだ?
「やっと真面目に聞くようになったわね――話を続けるわ。
あなたは自分で自分の家族を殺した。だけど、ばれたら不味いと思ったんでしょう――あなたはこの城に訪れ、兵士を殺し、王に罪を着せた」
ふーん。推理としては面白いな・・・でも何で俺が家族を殺したって分かるんだ?
そう俺が尋ねると、姫は悲しみの色を湛えた。
「本当に分かってないのね・・・」
な、何だよ・・・俺が何を分かっていないんだよ。
姫の言動に俺は動揺する。俺は何かまずいこと言ったのか・・・?
「私の顔をよく見て」
今まで節目がちだった姫は、すっと顔を上げる。
小さな顔。海のように深い青色の瞳。整った高い鼻。肌は雪みたいに白く、薄汚れた金色の長い髪・・・・。
この人形のような少女は――
―――誰・・・だ?
「まだ分からないのね・・・。仕方ないわ、これを見て」
姫は突然くるりと後ろを向く。
「これを見ても分からない?」
・・・・・!!
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――――長い長い道のりだった。
仲間と共にここまで来た達成感が込み上げてくる。
背の高い城壁を強引に乗り越えた。脆い石の壁は手でボロボロと崩れる。それを払いながら、俺達は前を見据える。やっと辿り着いたんだ。
遠目で見たときはさほど感じなかったが、いざ目の前にしてみると違和感がある。白く、澄んだ色をしていた城はそこにはない。暗い霧に覆われた黒い城が目の前にあった。
この城には国を闇のどん底におとしいれた王がいる。悪魔のような王が――。
俺は城を前にし、旅のことを思い出す。
―――辛い道のりだった。
ここまで来る前に何度か死にそうになった。
実際、仲間を何人も失っている。皆、王の手下達に寝込みを襲われたのだ。時には内臓部分だけがなくなってる死体があった。
得などほぼ無に等しい。
だが国の為――家族の為、俺は闘う。
―――クソ!!!
―――あいつの所為で・・・・あいつの所為で・・・・!!!
全てはあの憎き王の所為。全ての元凶なのだ。
俺はやってみせる――。
たとえ俺が滅びようとも――。
いや、俺は死なない――死なせない!!
俺はやり遂げてみせる!!!
仲間と共に城の中へと入る。RPGによく出てきそうな内装だ。大理石の床で高そうな絨毯がひかれている。その両端には銀の甲冑が乱雑の置かれ、絵画は朱に染まっている。もちろん、警備兵はいなかった。
―――それは王が殺してしまったから。
王は可笑しい。言わずともそんなことは分かる内装。
靴が反響する音も気にせず、俺達は廊下を走る。
純白だった絨毯は赤黒い色に変わっていた。赤い水溜りが何個もできている。前来た時と随分様子が変っていた。
それだけでも、普通は恐怖するだろう。が、さらに異質すぎる光景が、廊下を走る俺達の目に飛び込んでくる。
銀の甲冑の像があったところに、本物の死体が首に刺さった剣でぶら下がっているのだ。
まるで死の祭典――。
服装からするとこの城の兵士だったらしい。目をむき、口からは紫の舌が垂れ、耳からは異臭を漂わせる液体が流れていた。本などで描写ではない腐乱死体だ。目など、片方がかろうじて繋がっているという状態だ。ぶら下がっていると言った方が適切だろう。とてもじゃないけど見てられない。
数々の難関を突破してきた俺達の中でも、悲鳴を上げているヤツもいる。
王の行動を、ただ悲鳴を上げながら見ることしかできない国民のように――。
―――狂ってる。
どうして、王はこれほど狂ってしまったのか。
前まで何も悪いことはしていなかった筈だ――。
クスリでもやったのか―――俺には分からない。
否―――理解したくもない。考えただけで自分が壊れていきそうだ。
―――分からなくていい、俺が殺せばいいことなんだから。
俺が世界を救ってみせる――。
父さんの、母さんの、家族の―――仇。
家族を殺した男が生きているなんて許せない・・・。
俺は国の救世主になるんだ!!
コツコツと小気味いい音をたてながら、俺達は螺旋階段を駆け上がる。
ぐるぐると回る階段は、人生のように長い。終わりがないようだ。
ここでも途中途中で兵士や――王を倒しに来たのだろう――戦士などの死体が転がっていた。中には女・子供の首や腕らしきものもある。
階段に転がっているものを見ないよう、出口のことだけを考えながら上へ上へと進む。
カツン――――。
城の頂上にたどり着く。人生にもやがて終りがくる――そんなように。長四角の部屋も廊下と同じような色調である。大理石に絨毯、傾いたシャンデリアが部屋を照らす。
部屋の奥には、赤と金で装飾された玉座に座った――
―――王がいた。
王冠をかぶり、白髪の髪は後ろで三つ編みにし、無精髭を生やしている。その目は、悲しみとやるせなさが入り混じった色を浮かべていた。
まるで自分は何もできないという様に―――。
俺はその顔を見て、怒りがふつふつと沸いてくる。
―――この男が俺の家族を殺し男・・・・殺してやる・・・・。