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『あ。』
『どうしたの?』
『流れ星。』
『え、どこ?』
『もう消えちゃった。』
『ちぇーっ。』



彼女は昔、こんなことを言っていた。
『私ね、大きくなったらお星さまになるの。』
なんで、と聞いてみたら『秘密。』と言った。
いつ、と聞いたら『わからない。』って言ってたかな。
『ふーん。』と僕はよくわからないまま返事をして、また空を見上げた。


僕の住んでいるマンションには屋上があった。
3年前に誰かが飛び降りたとかで閉鎖になったけど。
そこから見える夜空はすごく綺麗だった。
天気の良い日は飽きもせず、毎日のように星を見ていた。

10歳くらいの頃だったかな。
いつものように屋上にいたら、同じくらいの年の女の子が声をかけてきた。
「なに見てるの?」
髪が長くておとなしそうな子だった。
「星だよ。」
僕は手元にあった星座の本を見せた。クリスマスにサンタさんにもらった宝物だ。
「ほらあそこに見えるのが―」
「知ってる。」
「え?」
「星のことならなんでも分かるよ。」
「そうなの?」
「うん。」
「すごーい!」
「う、うん。」

それから僕たちは毎日屋上であっていた。
名前も、どこに住んでいるのかもわからなかった。
毎日、2 3言挨拶をして、あとはあんまりしゃべらなかった。
でも一緒に星を見ているのはなんだか心地よかった。
彼女がどう思っていたかは知らないけれど、僕が隣に座っても何も言わなかったし、僕のほうが先に来た日は僕の隣に来てくれたのだから悪くは思ってなかったはずだ。

何年か経って、学校の話しこそしなかったが、将来の話しなんかをするようになった。
相変わらず会話は少ないが、だいぶ打ち解けてきた。
もっぱら喋るのは僕だったが。

高校生になって、それまでのように毎日屋上には行けなくなった。
でも屋上に行ったときには必ず彼女がいた。
彼女を見ると、なぜか安心感が生まれた。
無口だけど優しい感じ。
思わず「ありがとう。」と言ってしまったこともあった。
彼女は不思議そうな顔をして、そして少し笑った。


なんの前振れもなかった。
その日屋上に行くと彼女はいなかった。
時間はいつもどおりだった。
1時間経っても2時間経っても彼女は来なかった。
寒くなってきたので、僕は帰ることにした。
なんだか、とても不安で喪失感のようなものを感じた。

次の日屋上に行ってみると、そこには40代くらいの痩せた女の人がいた。
女性は僕の方へ向かってきた。
「あなたよね?―のお友達。」
―というのは聞いたことのない名前だった。
でも女性の顔を見てすぐ彼女の母親だとわかった。
優しそうで、でもどこか寂しそうな目が彼女と似ていた。
向こうも僕が気付いたことを察したのだろう。
口を開き「あのね、―はね、亡くなったの。」と言った。

あぁ、なんとなくそんな気がしたんだ。
だって目の前の女性はずっと哀しそうな顔をしているし、昨日から頭が重いし、あの喪失感といい…
女性は病気がどうとか星がどうとか言っていたがそんなことは知らない。
僕は飛んだ。
夜の風が冷たかった。



「私ね、大きくなったらお星さまになるの。」
「ふーん。」
「あなたは?」
「まだわかんない。」



決めたよ。
僕も星になる。



―が瞬いた気がした。
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