―4―
なぁユタ。
――なにー?
――ショウタから話し掛けるなんて珍しいね。
やっと冷房のボタンを押せたユタは、またちょこまかと僕の隣に来た。
どうやったら夢って出来るんだ?
――うーん…やりたい!したい!って思うことがあるからだよ。
それはどうやったら思い付くんだ?
――どうやったら…?
――そのことをしてて楽しいとか面白いとか思うからだと思うよ。
何をやったらそう思うんだよ。
――何って…それは人それぞれだよ!
そっか…。
――ショウタ?
いや、俺にはそういう夢がないからさ。
どんな感じなのかと思って。
僕には夢と呼べるものがない。
将来どうなりたいとか、どういう人間になりたいとか、自分の先のことについて何も考えてないのだ。
ユタが言ってた自分がやりたいことも分からない。
――うーん…でもいつか見付かるはずだよ!
…。
――だ、だ、だってさ!
――この"カゲ"のボクにだって見付かったんだよ!?
――ニンゲンのショウタだったらもって見付か…。
ユタ…いいよ、もう。
――ショウタ…ごめん…怒ってる…?
いや、怒ってねぇよ。
僕は立ち上がって教室を出た。
何だかむしゃくしゃする。
「お、祥太…!」
「…拓也?」
廊下に出ると隣のクラスの拓也がいた。
一年の時、同じクラスだったから、それなりに話すのだ。
拓也は短髪をかきながら、気まずそうに笑う。
「お前、顔酷いな…」
「…内田にやられたんだよ」
僕は絆創膏を撫でる。
さっき確認したら背中に青痣が出来ていた。
「いや…お前の顔のことだよ」
「…?」
「すげー怖い顔してたからさ」
拓也はいつもの笑顔でなく、困った笑顔をした。
「お前のことは色々聞くけど、あんまり無茶すんなよ?」
僕は一瞬で何のことか分かった。
「…"カゲ"のことか?」
「…」
拓也は目を伏せたが、その後僕を見て「ああ」と言った。
片眉を上げる。
何だか嫌な予感がした。