文とか詩とかー
頑張って更新頑張るお!
「狂った話だわ」
どこからか声が聞こえる。女の声に俺は我に返った。
「あなたもあなたね・・・。自分でそのことに気がつかないなんて」
きょろきょろと辺りを見回す。
どうやら、部屋の隅にあった鉄製の牢の中からだった。血の足跡を残しながら牢に近づく。
「どうして? ――あなたはどうしてこんな人になってしまったの?」
―――そういえば、王に囚われた姫がいたんだった。
綺麗な顔をしていた。が、薄汚れた白い服に身を包み、金の綺麗な長い髪もくすんだ色になっている。透き通っていただろう肌も灰色っぽくなり、無表情だった。
まるで汚れた人形だ。
姫は鉄格子を両手でつかんで、俺に語りかける。
「あなたは気づいていないの?」
何のことだ。
「自分のしたことよ・・・」
何を悲しんでいるんだ。俺がお前を助けてやったんだぜ? そんな顔しなくてもいいだろ?
「本当に気づいていないのね・・・。哀れな人・・・」
意味わかんねぇ。俺が何したんだって言うんだよ?
俺は姫の言葉に歯ぎしりする。普通喜ぶはずだ。
「・・・教えてあげるわ。でもいいの? あなたはこれを聞いたら"壊れる"わよ? 」
―――どういうことだ? 俺は国を救ったのに"壊れる"って・・・・。
別に俺は何もしちゃいないぜ? 国を救っただけだ。
姫は目を伏せ、少し躊躇ったようだがやがて口を開いた。
「国を恐怖におとしいれたのは―――あなたよ」
・・・・・は。
俺は姫の言った言葉が理解できなかった。国を恐怖させたのは俺が今、殺した王だ。話が食いちがっている。
どういう意味だよ。俺に喧嘩売ってんのか?
「・・・いいえ。やっぱり分かっていないようね・・・」
姫はとても悲しそうな顔をした。感情のない奴だと思ったが、どうやらそうでないらしい。
「じゃあ、あなたに質問をするわ。あなたはそれに答えて」
あ、あぁ。
「あなたの仲間はどこに行ったの?」
それを聞いて俺は不覚にも笑ってしまった。
はははっ!! 簡単な質問じゃないか!! 仲間ならそこに・・・・・。
俺はさっき仲間をおいてきた場所を指さす。
「どこにいるの?」
な、何でだよ!!
―――いなかった。
俺の人差し指の向こうには、仲間は誰1人としていなかった。
―――な、何で・・・・。
「まぁ、いいわ・・・。じゃあそこにいる人達は誰?」
姫は床に転がっている死体を指さす。
そ、そんなの王の手下だろう。俺が倒したの見なかったのか?
「ちゃんと見てみて」
―――うるさい女だな。手下だったから殺したんだろ。
俺は足で身近にあった男の骸を転がした。青白い顔が天井を向く。
―――う、嘘だろ・・・・。
「見覚えのある顔じゃない?」
その男は俺の仲間の1人だった。
しかし、腹をかっ斬られ白目をむいている。生気がない瞳は、俺のことを見ているようだった。
俺は怖くなって、部屋で倒れていた骸の顔を全て見た。
「どう? 全員あなたの仲間だった人じゃない?」
確かに全員見たことがある仲間だった。
王の手下が何人かいて、俺が戦っている間、仲間を殺したのか?
「いいえ。全てあなたがやったことよ?」
俺が・・・・・仲間を・・・? そ、そんな訳ないだろ!!!
「まぁ、この質問はこれで終わり。その仲間の名前、全員言える?」
当たり前だ!! えっとコイツは・・・・・コイツは・・・・
「どうしたの? 早く教えて」
うるさい!! 名前・・・名前・・・・
「知らなかったんじゃない?」
・・・・・?
「あなたは仲間の名前も知らずに、ここに来たんじゃないの?」
・・・・・・。
―――確かに、名前が分からない。誰1人――。
「そう、あなたは仲間のことも知らずにここまで来た。
――いいえ。あなたはすでにここに来ているわ」
あぁ、1度だけ来たことがある。確か・・・・そこに転がっている王が任命された時だ。俺たち国民は城に1回集まった。それがどうした?
「その後1度は来ているはずよ」
俺はその1度しかここへ来たことがない。何を言っている。
「あなた、家族を王に殺されたの?」
姫は何故だか呆れているようだった。
今更何を言っているんだ!! だから王を倒しに来たんだろ!!?
「ふーん。随分都合のいいようになっているのね、あなたの脳みそは」
・・・・?
「教えてあげる。あなたは今より前にここに訪れた。自分自身の罪を他人になすりつける為に」
PR
この記事にコメントする